●グループの名称を変更しました。

(インターナショナル第199号:2011年4月号掲載)


 ウエヴサイト「インターナショナル」の読者ならびに友人のみなさん。
 わたしたち「第四インターナショナル日本支部再建準備グループ」は去る2月、2011年度のグループ総会を開催し、グループの名称を「政治グループ・MELT」に変更することを確認しました。
 このグループ名称の変更は、もちろん単なる呼び名の変更ではありません。わたしたちのグループ名に含まれていた「第四インターナショナル日本支部再建」は、わたしたちの組織的目標を具体的に示すものだったのに対して、新しいグループの名称にはそうした目標が明示されていない事実がそれを象徴しています。
 読者、友人のみなさんはすでにご存知のように、わたしたちはここ10年来、レーニンと並ぶロシア10月革命の指導者にして第四インターナショナルの創設者であるレオン・トロツキーが命を賭して擁護した「ボルシェヴィズム」が、アメリカ合衆国のヘゲモニーによって再組織された第二次大戦後の資本主義世界を変革する思想的武器としては、その有効性を失ったのではないかという問題提起をつづけてきました。
 こうした問題提起の詳細と、そうした認識に至った経緯などは、グループ内の研究会や討論をベースにして刊行された2冊の寺岡衛の著書(『戦後左翼はなぜ解体したのか』『20世紀社会主義の挫折とアメリカ型資本主義の終焉』)と、このウエヴサイトに掲載されている「研究ノート」をはじめとする諸文書で明らかにされていると思いますが、わたしたちが、レーニンの「帝国主義論」に象徴されるボルシェヴィズムの抜本的な再検証に踏み込むことになった最初の大きな契機は、1989年の東欧市民革命からソ連邦の崩壊に至る一連の過程で、トロツキーが予見した反官僚政治革命がついにその姿を現すことなく、第四インターナショナルが無条件に擁護すべきとしてきた労働者国家群が、資本主義的市場経済とこれに対応する代議制民主主義の体制へと雪崩をうって転換した現実でした。
 それは、1917年のロシア10月革命を領導したボルシェヴィズムと、その革命的伝統を継承した「過渡的綱領」が共に前提とした時代認識、つまり帝国主義の時代は社会主義革命の前夜であり、いまや資本主義は死の苦悶の中にあるという歴史的前提が、現実の歴史によって裏切られた≠アとを明らかにしたと言えるでしょう。
 と同時にこの現実は、わたしたちにマルクスの『経済学批判序言』の中の一節「一つの社会構成は、それが十分包容しうる生産諸力がすべて発展しきるまでは、けっして没落するものではなく、新しい、さらに高度な生産諸関係は、その物質的存在条件が古い社会自体の胎内で孵化されおわるまでは、けっして古いものにとって代わることはない」【大月書店版『マルクス・エンゲルス8巻選集』第4巻(1974年2月刊)41頁】という、古くて新しい革命論争の種を思い起こさせるに十分でした。
 1848年のドイツとフランスの革命が資本主義を打倒しえなかっただけでなく、むしろヨーロッパ産業資本主義の新たな発展の契機にさえなった事態を総括したマルクスのこのテーゼに従えば、1930年代にファシズムとボルシェヴィズムに挟撃されて崖っぷちに立たされたヨーロッパ資本主義を救済したアメリカ型資本主義=フォーディズムは、第二次大戦後の半世紀を経てなお、その「生産諸力がすべて発展しきる」には至っていなかったのだし、「新しい・・・高度な生産諸関係は」、フォーディズム資本主義という「古い社会自体の胎内で孵化され」てもいなかった、ということになります。
 そしてもう一つの、わたしたちにグループ名称の変更を決断させた事件は、ソ連邦の崩壊から20年が過ぎようとしていた2009年2月、戦後第四インターナショナルの最大・最強の拠点であるフランス支部が自ら解党し、NPA(反資本主義新党)の結成に合流した事実でした。こうしたフランス支部の同志たちの決断に対するわたしたちの態度は、ウエブ版「インターナショナル」No187(09年5月)を参照していただければ判りますが、事実としてのフランス支部の解散は、インターナショナルの書記局が形式的に残されようとも、戦後第四インターナショナルの事実上の終焉と言う他はない事態でした。

 

 その上でわたしたちは、唯物論と弁証法によって人間社会を科学的に分析しようとする、マルクス(M)からエンゲルス(E)に、そしてレーニン(L)やトロツキー(T)へと受け継がれてきた方法論を積極的に継承し、まさにこの方法論を駆使することで現代社会を変革する新たな理論と展望を見い出そうとする研究活動と、それを踏まえた実践的経験の蓄積とを新たな目標にして、政治グループとしての活動を継続しようと考えています。
 この新しい目標は、「革命的前衛党である日本支部の再建」という旧い目標との関係で言えば「新しい革命綱領を準備する」ということでしょうが、現実的で実践的なそれは、戦後左翼の基本テーゼでありつづけた「帝国主義論」に代わる「現代資本主義論」の再構築に挑戦することに他ならないと考えています。
 現実にも、08年のリーマンショックを契機とした世界金融恐慌は、ボルシェヴィズムを凌駕してソ連邦を崩壊に追い込んだアメリカ型資本主義=フォーディズムもまた、その歴史的限界を露呈しつつあることを暴くことになったし、それと共に戦後福祉国家の担い手であった社会民主主義とくに欧州のそれを、新たな政治再編の波に直面させることにもなっています。
 その意味でも現代資本主義論の再構築は、革命と戦争に彩られた20世紀の主要な4つの思想潮流=ボルシェヴィズム、ファシズム、フォーディズムそして社会民主主義の終焉を踏まえて、たとえそれが世代を継いだ長期におよぶ挑戦になるとしても、資本主義社会の超克を目指すかぎり不可欠の課題であると思うのです。
 私たちはその手始めとして、戦後世界を再組織したアメリカ型資本主義を再把握すべくアメリカの過去と現在とを多様な側面から再検証し、その未来を、言い換えれば現代世界資本主義の今と明日とを見定めようと試みる活動をすすめ、同時にこのウエヴサイトを介して読者・友人のみなさんとの真摯な意見交換も試みたいと考えています。
 
 2011年3月
    ●政治グループ・MELT


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